ホームインスペクションと耐震診断の違いとは?中古住宅購入で役立つ基礎知識を解説2025.10.09
中古住宅を購入する際には、建物の劣化や耐震性をしっかり確認しておくことが欠かせません。
外観がきれいでも、基礎や柱が傷んでいたり、雨漏りやシロアリの被害が進んでいることもあります。
耐震診断やホームインスペクションを活用すれば、屋根や外壁、床下といった普段は見えにくい部分まで調べられ、暮らしの安全性や将来の修繕費用を見通しやすくなります。
本記事では、中古住宅における耐震とホームインスペクションの基礎知識や確認ポイントを、分かりやすく解説していきます。
ホームインスペクションと耐震診断の違い

ホームインスペクションと耐震診断はどちらも建物の状態を調べる調査ですが、確認する内容や目的が少し異なります。
中古住宅の購入や今後の暮らしを踏まえて、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
ホームインスペクションは家の“健康診断”
ホームインスペクションは、中古住宅を購入するときによく利用される建物調査で、いわば「家の健康診断」のようなものです。
外壁や屋根、床下や天井裏といった普段は見えにくい部分まで確認し、ひび割れや雨漏り、シロアリ被害、水回りの不具合などを調べます。
調査は非破壊で行われるため、建物に傷をつけることなく劣化の有無を把握できるのが特徴です。
購入前に不具合を知ることで修繕費用を見積もりやすくなり、将来的なメンテナンスの計画を立てることにもつながります。
耐震診断は数字で示す“地震への強さ”
耐震診断は、建物がどの程度の地震に耐えられるかを専門的に評価する調査で、「地震への強さ」を数字で示してくれるのが大きな特徴です。
柱や梁の配置、屋根や外壁の重さ、基礎の強度などを詳しくチェックし、最終的に「耐震評点」という指標が算出されます。
評点が1.0以上であれば、新耐震基準を満たしていると判断され、倒壊リスクが低いと考えられます。
診断には図面と目視を組み合わせる一般診断法と、部分的に解体して細かく確認する精密診断法があり、目的や予算に合わせて選ばれます。
両方を実施して安心できる暮らしへ
中古住宅を選ぶ際には、ホームインスペクションと耐震診断を両方受けることで、より安心感を持つことが出来ます。
インスペクションで生活に直結する劣化や設備不良を把握し、耐震診断で地震への耐久性を数値で確認することで、住まいの現状を多角的に理解できるためです。
例えば、インスペクションの結果で雨漏りの痕跡や基礎のひび割れが見つかり、耐震診断で評点が基準を下回った場合には、購入後すぐに補強や修繕の検討が可能です。
逆に両方で問題が少なければ、安心して暮らせる可能性が高まります。
役割の異なる調査を組み合わせることで、中古住宅の購入に伴う不安を減らし、長く安全に住み続けるための土台を整えることが出来ます。
中古住宅で気を付けたい耐震チェック
中古住宅を購入するときには、建物そのものの強さだけでなく、劣化や被害の有無を確認することが欠かせません。
目視では確認出来ない部分のチェックを通じて、安全性をより具体的に判断できます。
築年数から分かる“基準の違い”
中古住宅を検討するときは、まず「建てられた年」に注目することが大切です。
日本では1981年と2000年に耐震基準が大きく改正されており、建物の安全性における基準が異なります。
築年数ごとの違いを整理すると次のようになります。
築年数の基準 | 耐震基準の内容 | 想定されるリスク |
1981年6月以前 | 旧耐震基準(震度5程度で倒壊しないことを想定) | 大地震(震度6強〜7)では倒壊リスクが高い |
1981年6月〜2000年5月 | 新耐震基準(震度6強〜7でも倒壊しにくい設計) | 現行基準よりは性能がやや劣る場合がある |
2000年6月以降 | 改正基準(耐震等級1以上を確保) | 耐震性能がより明確に保証され安心感が高い |
また、耐震診断を受ければ数値で安全性を確認できるため、築年数とあわせて判断材料にすると安心です。
ひび割れは危険のサイン
外壁や基礎、室内の壁に入ったひび割れは、耐震性を判断する大切な手がかりになります。
細い表面のひびは経年劣化による場合もありますが、幅が広いものや斜めに走るものは建物の構造に関わる可能性があり要注意です。
特に基礎や柱のまわりに見られる大きなひびは、地震の際に建物の強度を大きく下げる危険があります。
内覧時には壁や天井だけでなく床や基礎も観察し、気になる部分は専門家に調査を依頼するのがおすすめです。
ホームインスペクションを利用すれば、ひび割れの原因や深刻度を専門の目で判断してもらえるため、安心して購入の判断ができるようになります。
シロアリや雨漏りのダメージ
中古住宅で見落とされがちなのが、シロアリや雨漏りによるダメージです。
シロアリは木材を内側から食べてしまうため、柱や土台がスカスカになり、地震の揺れに耐えられなくなることがあります。
また、屋根や外壁から雨水が侵入すると、梁や床下の木材が腐って強度を失い、見た目は綺麗でも耐震性が落ちているケースがあります。
家の被害は外から見ると分かりにくいため、屋根裏や床下を含めた調査が役立ちます。
中古住宅では、耐震とホームインスペクションを組み合わせることで、目に見えない部分まで丁寧に点検でき、将来的な修繕リスクを減らすことにつながるでしょう。
地盤や立地のリスクも確認する
建物自体の強さだけでなく、地盤や立地条件も耐震性に大きく影響します。
柔らかい地盤や造成地では揺れが増幅しやすく、液状化や沈下のリスクがあります。傾斜地や崖の近くでは、地震に加えて土砂災害の心配も出てきます。
中古住宅を検討するときには、築年数や劣化状態だけでなく、ハザードマップや地盤調査の情報を確認しておくことが大切です。
ホームインスペクションでは、建物の状態を調べるだけでなく、地盤や立地について簡易的なアドバイスをもらえる場合もあります。
また、耐震診断と併せて行えば、家そのものと土地の両面から安全性を見極められるようになります。
ホームインスペクションで判明すること
ホームインスペクションでは、普段は気付きにくい部分まで専門家が調査し、建物の劣化や不具合を明らかにすることで、住まいの現状をより具体的に把握できます。
調査は外回りから室内・設備まで実施
ホームインスペクションでは、基礎や外壁、屋根といった外まわりから、室内や水回り、電気設備まで、建物全体を丁寧に調べます。
外壁のひび割れや雨漏り、バルコニーの防水の状態などを確認し、室内では床の傾きや天井のシミ、建具やサッシの開閉不良などをチェックします。
さらに浴室やキッチンでは水漏れや排水の状態を、照明やコンセントでは通電の確認を行います。
オプションを利用すれば、床下や屋根裏に入り込んで、シロアリの被害や断熱材の劣化、配管の漏水といった見えにくい部分も調査可能です。
中古住宅で耐震とホームインスペクションを受けることで、購入前に建物の「健康状態」をしっかり把握出来ます。
報告書で劣化や修繕の目安が分かる
調査結果は、写真やコメントを添えた報告書としてまとめられます。
報告書には、外壁のひび割れや床の傾き、雨漏りの跡など、具体的な劣化の状況が明確に示されます。
それだけでなく、「後何年ほどで修繕が必要か」「どの部分を優先的に直すべきか」といった目安も分かるため、将来の計画に役立ちます。
普段の生活では気づきにくい給排水管や設備機器の状態も客観的に確認できるため、安心感が得られるのも特徴です。
資産価値を守ることにもつながる
ホームインスペクションは、不具合を早期に見つけるだけでなく、建物の資産価値を守る役割も果たします。
定期的に点検をして必要なメンテナンスを行えば、大きな修繕を避けやすくなり、建物の寿命を延ばすことができます。
また、売却を検討する際には、専門家の報告書が買主に安心感を与え、価格交渉や取引がスムーズに進むでしょう。
耐震性が確認されれば、地震保険の割引や補助金の対象になる場合もあります。
耐震補強とリフォームを上手く組み合わせるコツ

耐震補強は単体で行うよりも、リフォームと組み合わせることで効率や費用面でのメリットが生まれます。
計画の立て方次第で、住まいをより安心で快適な空間に近付けられます。
まずは費用の目安を押さえる
耐震補強工事の費用は工事内容によって幅があります。
部分的な補強なら比較的安く済みますが、大規模な工事では高額になりがちです。目安を知っておくと計画が立てやすくなります。
【代表的な工事と費用の目安】
工事内容 | 費用の目安 |
壁に筋交いを追加・耐震金物を設置 | 20〜40万円程度 |
壁を構造用合板で補強 | 25〜65万円程度 |
基礎の増し打ち補強 | 40〜60万円程度 |
屋根の軽量化(葺き替え) | 100〜200万円程度 |
全体的な耐震補強工事 | 100〜200万円以上 |
建物の広さや築年数、劣化の程度によって金額は変動します。
リフォームと同時に実施すれば割安になる
キッチンや浴室のリフォームを予定しているなら、工事と一緒に耐震補強を行うのがおすすめです。
足場を組んだり壁や床を解体したりといった作業をまとめて進められるので、余計な手間や費用を省くことができます。
例えば、壁の張り替えと同時に耐震補強をすれば、工事の二度手間を避けられますし、床や天井のリフォームに合わせて補強を加えれば、暮らしやすさと安全性を一度に高めることが可能です。
工事の期間も短縮できるので、生活への影響も少なくて済みます。
公的支援を活用する
耐震補強の費用は高額ですが、自治体や国の制度を上手に利用すれば大きな負担軽減につながります。
条件を満たす中古住宅なら、診断や工事の一部を補助してもらえる可能性があります。
【主な支援内容の例】
■自治体の補助金
- 耐震診断費用の補助(上限15万円程度)
- 補強工事費用の補助(上限100〜120万円程度)
■住宅金融支援機構の融資制度
- 耐震改修のための工事費用を上限1500万円まで融資
■税制優遇
- 所得税控除や固定資産税の減免(1年間分など)
築年数や診断結果による条件が定められており、申請期限がある場合も多いため、早めに自治体へ相談するのがおすすめです。
まとめ
中古住宅を購入するときには、劣化の有無や耐震性を確認することで、暮らしの安心度が大きく変わります。
ホームインスペクションで不具合や修繕の目安を把握し、耐震診断で地震への強さを数値として確認すれば、長く安全に住み続けるための準備が整います。
耐震補強をリフォームと同時に行い、公的支援を活用すれば、費用面の不安も軽減されるでしょう。
フィルダ建築設計舎では、代表の一級建築士が直接ホームインスペクションを行い、経験に基づいた丁寧かつ客観的な診断をご提供しています。
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